リーダー,マネージャーと言っても役割はいろいろあって,組織のフェーズ,規模,目指すビジョンによっても求められるアクションが異なる.だからこそ難しいし,チャレンジングだと思う.また「リーダー論」をテーマにした本もたくさん出版されていて,最近だとオススメの本を聞かれることも増えてきたけど,僕は「ザ・ファシリテーター」をよくオススメしている.最初に読んだのはもう5年以上前のことだと思うけど,最近もう一度読み直してみて,今だからこそ感じることができる刺激もあった.本書の書評をまだブログに書いていなかったので,今さらながら書くことにした.
- 作者: 森時彦
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2004/11/12
- メディア: 単行本
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続編も出ていて,位置付け的には「実践応用編」となっているけど,個人的には「ザ・ファシリテーター」を読めば十分だと思う.
- 作者: 森時彦
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2007/01/27
- メディア: 単行本
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ファシリタティブ・リーダーシップ
「ファシリテーター」と聞くと,議論を中立的な立場から整理する役割のように感じる人が多いと思うけど,本書で描かれている「ファシリテーター」というのは「ファシリタティブ・リーダーシップ」と表現されていて,意見を引き出し,議論を促進し,個人や組織のパフォーマンスを最大化する「リーダーシップ」のことを意味している.僕はこの「ファシリタティブ・リーダーシップ」という表現が非常に好きで,リーダー,マネージャーに必要なスキルセットだと考えている.また,本書が素晴らしいのは小説形式になっていることで,自分の所属する組織に当てはめてみたりして,小説の世界でロールプレイングをしながら学ぶことができる.「ファシリタティブ・リーダーシップ」は理論だけ知っていても意味がなく,実践してこそ価値があるものだから.
構造化された議論
ファシリテーションフレームワークを使うことのメリットは「構造化された議論」ができることだと思う.本書でも「社長からの非現実的なビジネス目標」に絶望する場面が多く出てくるけど,「できない理由」を全て書き出して(これを発散と言う),次に「できるようにするには何ができるか」に置き換えていく(これを収束と言う)アプローチが紹介されていたりもした.どんなに非現実的な目標であっても,小さくブレイクダウンして「解決できそうな粒度」まで落とし込むことによって,可能性が見えてきてモチベーションが上がるという話は,メンタリング(自己達成)にも似ているし,スクラム開発にも似ているし,どんなシチュエーションにも応用可能なアプローチだと思う.僕はファシリテーションフレームワークを以下の本から学んだ.コンパクトにまとまっていて良いと思う.
ファシリテーターの道具箱―組織の問題解決に使えるパワーツール49
- 作者: 森時彦/ファシリテーターの道具研究会
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2008/03/14
- メディア: ペーパーバック
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やっぱり大切なのは腹を割って議論できる人間関係
本書の最初に「リーダーズ・インテグレーション」というフレームワークが紹介されている.リーダーと部下の関係を改善するために有効で,本音ベースの自己紹介をすることによって信頼関係を築くことができる.また「ジョハリの窓」の話も出てくる.また「緊張をほぐす質問」と表現される通り,空気を和らげるスキル(もしくは雰囲気・素質)が重要なのもリアルに描かれている.後半部分に出てくる「ウソつき自己紹介」というアイスブレークも面白いと思った.このあたりの話は,先月の勉強会で「組織パフォーマンス」の話をしたときにも引用したけど,やっぱり大切なのは人間関係だし,心理的安全だし,腹を割って議論できることだなというのが,個人的な結論だったりする.
まとめ
- 「ザ・ファシリテーター」は新任リーダーにオススメ
- ファシリタティブ・リーダーシップ
- 構造化された議論を促進するためにファシリテーションフレームワークをよく知っておく
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似たようなテーマだと「あなたのチームは、機能してますか?」もオススメ.同じく小説形式になっていて,反面教師的に読むことができる.
少しテーマは異なるけど「1分間マネジャーの時間管理」もリーダー,マネージャーの心構えを学べるのでオススメ.
読んだ!