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Docker を学ぶなら「箱」の歴史も合わせて学ぼう /「コンテナ物語」を読んだ

最近ずっと読んでいた「コンテナ物語」をやっと読了した.

『世界を変えたのは「箱」の発明だった』というサブタイトルにある通り,コンテナの登場によって世界中の物流構造が激変したというノンフィクションがテーマの本だ.2013年にはビル・ゲイツ氏が The Best Books I Read in 2013 | Bill Gates としてピックアップしていて,前々からずっと気になっていた.

なぜ今さら読んだかと言うと,コンテナ型の仮想化技術として Docker が流行ってるし,物流業界におけるコンテナの歴史を知ることで,Docker に対するメタファーをより深く学べるのでは?と思ったからなんだけど,冷静に考えてみて「メタファーを学ぶため」って自分意識高すぎるのではwww

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

Malcom McLean

本書の主人公は「マルコム・マクリーン (Malcom McLean)」である.トラックの運転手として働きながら,陸運会社を立ち上げ,さらなる効率化を図るために海運業にまで手を広げる.そこでコンテナを活用した物流システムを構築して,当時の物流構造を変えてしまった.先見の明とも言えるビジネスセンスを持ち合わせていて,さらに常に攻めの姿勢を貫いて考え続けている点が起業家としての強さだと感じた.

常に成功し続けているわけではなく,大きな失敗も数多く経験している点が非常にリアルで,起業・買収・売却・分社化を幾度と無く行っている.最後の最後にマクリーン・インダストリーズは巨額の負債を抱えて倒産する.路頭に迷う社員も多く,大きな失敗とも言えるが,2001年に死去する際には功績を讃えられるなど,影響の大きさが伺えた.

2001年5月30日、マクリーンの葬儀の朝には世界中のコンテナ船が汽笛を吹鳴して弔意を表している。

実はマクリーンはコンテナを発明したわけではなく,あくまでコンテナを活用した物流システムを構築し,規格化し,変化を推進した点に凄さがある.この話も Docker に似てるなと感じた点があり,従来から LXC など類似の技術はあったが,Docker の凄さはそのエコシステム全体を確立した点にあると思う.マクリーンと Docker は似てる.発明と普及は全く別物であることがよくわかる.

個人的にマクリーンが大企業の官僚主義を知って残念に語った一言も好きだった.

要するに私は起業家で彼らは経営者だった。経営者の集団に起業家を入れるとろくなことにならない。

機械化と失業の関係性

本書を読んでいて「沖仲仕(おきなかし)」という言葉を初めて知った.沖仲仕とは港で船から荷降ろしをすることに特化した職人のことで,コンテナリゼーションが普及する前は多くの労働者がいた.ただし,不安定な日雇労働であることは間違いなく,朝から港に並んで選ばれた人のみが港に入れるという仕組みだったと知って驚いている.

当然ながらコンテナリゼーションが普及すると,全てが効率化されて,クレーンなどを活用したオートメーションも強化されるため,沖仲仕は大量に失業してしまう.労働組合との戦いだったり,沖仲仕からの反発だったり,本来なら物流システムのイノベーションであるはずのコンテナリゼーションの推進が一筋縄では行かないところも,大変だよなぁと心が傷んだりした.

沖仲仕をエンジニアリングで考えるとまさに「デプロイ職人」だと思う.Docker でビルドしたワンバイナリをサーバに配置するだけでデプロイが完了してしまうと,今まで独自の暗黙知を育ててきたデプロイ職人は失業してしまう.メタファーだ.

「波止場」を観た

コンテナリゼーションが普及する前の時代背景として,本書では映画「波止場」の紹介が少し出てくる.本書は挿絵や図解がほとんど無く,業界知識がゼロの自分としては少しイメージしにくい点もあったため,参考に観てみた.

ラストシーンは人間味のあるカットになっていて,普通に楽しめるギャング映画だった.映画の中心は沖仲仕の日常で,こうやって朝から港に並ぶんだなという雰囲気を知れたし,安定した日雇を実現するためにはある程度悪に足を染めないといけなかったりと,誇張されたリアルだなと感じた.

波止場 コレクターズ・エディション [DVD]

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まとめ

日々エンジニアリングをしていると,建築のメタファーをよく聞くけど,特にインフラや DevOps の領域は物流のメタファーに近い感じがした.今後は物流関連の本を読んでみたり,実際に港に行ってみたりして,業務に活かせるアイデアを探してみたいなと思っている.

コンテナリゼーションで言えば,不法侵入者や毒物がコンテナに積まれていることをコンテナを開けずに検知する方法だったり,複数のコンテナをセットで運ぶピギーバック(前にアドテクにいたからタグのピギーバックのことをすぐ想像してしまった...)だったり,コンテナを移動するクレーンの規格だったり,エンジニアリングでも似たような話ができそうなメタファーばかりだと思う.

本書は少し量も多く,読むのに時間は掛かるけど,普段考えることもなかった物流業界の歴史を少し知れたという点で学びがあった.特にマクリーンという偉大な起業家の挑戦を知り,既存のビジネスモデルを破壊するイノベーションのインパクトの大きさに驚いた.コンテナリゼーションは20世紀最大のイノベーションなのでは?

エンジニアにオススメの一冊!!!

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

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