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達海猛からリーダー論を学ぶ /「GIANT KILLING」と「大金星本」を読んだ

最近「GIANT KILLING(ジャイキリ)」にハマりにハマっている.ジャイキリとの出会いは会社の先輩に紹介されたことで,サッカー漫画という側面だけじゃなく,組織論やリーダー論を学べる側面もあって是非読むと良いとのことだった.最初あまりサッカーに関心がなく,読むモチベーション保てるかなーと思っていたら,先に解説本から読むのも良いとのことで「大金星本」を紹介された.「大金星本」を読んでみたら,あまりの面白さに漫画も読まずにはいられなくなり, 最終的に現在 Kindle で発売されている最新40巻まで一気に読んでしまった.今ではもう達海猛(主人公となる監督)とストーリー全ての虜になってしまっていて,娯楽としての観点と,学びとしての観点の双方で読んでいる.

大金星本

ジャイキリの解説本である「大金星本」を読んだ感想から書いていく.

グループとチーム

最初に「グループとチームの違いって何だろう?」という議題が与えられる.明確な答えはなく,自分の考えを言語化することが重要で,一度本を読み進めるのを止めて,考えてみると良いと思う.僕が考えた回答は「お互いがお互いの長所短所を理解して,自律的に伸ばし合える組織はチームと言える」だった.個人的な経験から組織内で役割をガチガチに線引きすると伸びしろが無くなってしまうと考えていて,他の役割もオーバーラップすることで,成長の機会にもなるし,お互いをよく知る機会にもなる.そういうことを自然とできる組織は強いと考えていて,チームとはそういうものではないかという結論に至った.実際に本書に似たような記述もあって,間違ってはいないかなと思った.

タックマンモデル

本書では「グループ」から「チーム」に成長するために大きく4個のステージがあるという解説がされている.前提知識がないと筆者が考えたモデルと思ってしまいそうだけど,組織論に興味がある人ならすぐ気付く通り「タックマンモデル」のことを言っている.正確に言うと,タックマンモデルにおける「ステージ4」は「パフォーミング」だったり,研究が進んで「ステージ5 : アジャスティング」が追加されたりもするけど,大きく同じと考えて良いと思う.タックマンモデルに関しては Tuckman's stages of group development - Wikipedia, the free encyclopedia を参照で!

  • ステージ1 : フォーミング(形成期)
  • ステージ2 : ストーミング(混乱期)
  • ステージ3 : ノーミング(規範期)
  • ステージ4 : トランスフォーミング(変態期)

フォーミング体質

詳細は本書に譲るとして,個人的に大切にしたいなと感じたのは「フォーミング体質」の良し悪しだった.タックマンモデルで言う「ストーミング」に入ると名前の通り「嵐」のようにメンバー間に衝突が起こるため,短期的に見ると組織全体のパフォーマンスが落ちて非効率に見えるため,その状態を避けることで「フォーミング」に戻ってしまう.本書で言及されているのは「優秀すぎるリーダー」で,組織全体をコントロールすることに価値を置き過ぎると「フォーミング」から進めずに停滞してしまう.そうやってコントロールしすぎるリーダーは組織を強くできないし,「優秀すぎる」という表現が皮肉のように聞こえた.自律性のある組織こそコントロールを捨てて,新たな可能性を引き出すことに価値を置いていると思う.

Acknowledgement

次に「Acknowledgement」で,メンバーに対して自己重要感を高めるためのテクニックと言える.マズロー5段階欲求にある「承認欲求」に近いけど,必ずしも褒める必要はなく「承認欲求」よりもカジュアルな承認だなという印象を受けた.例を挙げると「声を掛ける」や「変化に気付く」や「意見を聞く」など.確かに些細なことでも Acknowledgement を受けるとモチベーションは上がるし,意識して使っていきたいなと感じた.

WANT の目標

あと「ノーミング」では「アシスト力」や「気付き力」など重要な流儀が関係してくる.重要なのは「自律」で個人で自律して,組織で自律するフェーズであるということ.そのために「ゴール = MUST ではなく WANT の目標」をうまく設定することも必要になる.Google で実践されている ORK にも似てるように感じた.

このようにジャイキリをテーマに達海猛の組織論を学べる一冊になっていて,2時間程でサクッと読めるし,導入としては良いのでは!(圧倒的に漫画がオススメだけど!)

今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則――『ジャイアントキリング』の流儀

今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則――『ジャイアントキリング』の流儀

GIANT KILLING

大金星本を読んだら漫画を読みたくなると思う.ネタバレしたくないけど,面白さを伝えたいから,とにかく 1-5 巻あたりを読んでみて欲しい.僕自身サッカーに詳しくなくて,今まで関心がなかったけど,問題なく楽しめる.そこは断言できる.

個人的にジャイキリで好きなメンバーとポイントを挙げるとすると...

  • 達海猛(潜在能力を引き出すコーチング / ズバッと言う態度 / 頭脳明晰な戦略 / 隠れた努力 / ハッキリとした喜怒哀楽)
  • ジーノ / 夏木 / 黒田 / 赤崎(プロフェッショナルな側面と厨ニ病な側面が混ざって最高の雰囲気をチームにもたらしてる)
  • 松原ヘッドコーチ(とにかく心配性で達海猛と間逆な雰囲気に反面教師な気付きが得られる)

ただ組織を率いるためにはある程度の実績が必要だと思っている.達海猛には名プレイヤーとしての実績と名監督としての実績があり,強気な態度にも説得力がある.開発でも同じことが言えて,レガシーな開発チームを変革するために技術顧問の一言が大きな影響を及ぼすのは説得力があるからだと思う.同じ技術を提案するにしても,組織内に埋もれているメンバーが提案するのと,技術顧問が提案するのでは,響き方が全然違う.悔しいし,皮肉だなとも思うけど,結局は過去の実績がある人の声は大きくなるということだと思う.そういう意味で,達海猛は組織を率いる前提条件を満たしている限られた人材だなと羨ましく思ってしまったりもした.

GIANT KILLING(1) (モーニングコミックス)

GIANT KILLING(1) (モーニングコミックス)

GIANT KILLING(2) (モーニングコミックス)

GIANT KILLING(2) (モーニングコミックス)

関連する本

ジャイキリを読んでいると,今までに読んできた本を思い出すことが多かった.関連する本を挙げておきたいと思う.

世界最先端の経営学

達海猛のリーダー論を考えたときに,最近読んだ以下の本に書かれていた「トランスフォーメーショナル・リーダーシップ(下記に引用)」だなと感じた.逆に「トランスフォーメーショナル・リーダーシップ」と相反する「トランザクティブ・リーダーシップ」を重視するチーム監督もいて,監督によって全然違うなと感じさせられた.

(1) 組織のミッションを明確に掲げ、部下の組織に対するロイヤリティーを高める
(2) 事業の将来性や魅力を前向きに表現し、部下のモチベーションを高める
(3) 常に新しい視点を持ち込み、部下のやる気を刺激する
(4) 部下一人ひとりと個別に向き合いその成長を重視する

また以下の本では経営学におけるダイバーシティ(男女・国籍など)の研究に関しても言及されていて,ふと思い出した.達海猛のリーダー論はダイバーシティに対してどう影響するのだろうと個人的に関心を持った.

ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学

ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学

モチベーション3.0

上記の「トランスフォーメーショナル・リーダーシップ」と似ていて,達海猛のリーダー論は「モチベーション3.0」を構成する要素「自律性 (Autonomy)」と「マスタリー (Mastery)」と「目的 (Purpose)」を全て満たしているなと思った.組織が「ノーミング」や「トランスフォーミング」に進んでいくには絶対に必要な要素だろう.

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか (講談社+α文庫)

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか (講談社+α文庫)

kakakakakku.hatenablog.com

自分でやった方が早い病

村越の責任感を見ていて以下の本を思い出した.組織をスケールさせたり,メンバーを成長させたり,圧倒的な成果(ジャイアントキリング)を出したりするためには「任せる」決断が必要で,達海猛は村越の病を治しているんだなと感じた.最初の村越はある意味でサーヴァントリーダーとも言える.以下の本は昔から何度も読み返していて,個人的に重要な一冊になっている.

自分でやった方が早い病 (星海社新書)

自分でやった方が早い病 (星海社新書)

Fearless Change

ジャイキリを読んでいると Fearless Change なパターンに当てはまる場面があまりに多く,具体的な事例を見ているように感じられて参考になった.挙げるとキリが無さそうだけど,以下など.

  • [2] 小さな成功
  • [3] ステップ・バイ・ステップ
  • [6] 協力を求める
  • [18] 感謝を伝える
  • [22] 種をまく
  • [33] みんなを巻き込む
  • [39] 相談できる同志
  • [44] 懐疑派代表

Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン

Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン

  • 作者: Mary Lynn Manns,Linda Rising,川口恭伸,木村卓央,高江洲睦,高橋一貴,中込大祐,安井力,山口鉄平,角征典
  • 出版社/メーカー: 丸善出版
  • 発売日: 2014/01/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログ (16件) を見る

まとめ

ジャイキリファンの人からすると「今さら遅っ!」って言われてしまいそうだけど,個人的に本当に刺激的なストーリーで,特に達海猛に魅せられてしまった.最近は友人に「ジャイキリ読んだ?読もう読もう!」とオススメしまくっている.組織論やリーダー論の観点で,よりエンジニアリングの現場に重ね合わせた話が聞いてみたいし Rebuild.fm で Show Notes に挙がったら最高だなと思うし期待してる.

本当にジャイキリ最高!