去年に引き続き「教えるとは何か?」というテーマで探求をしていて,図書館で前から気になっていた「いちばんやさしい教える技術」を借りることができたので,ザッと読んでみた.非常にカジュアルな本で,2時間程度で読めてしまった.理論的な話はほとんど出てこないため,気軽にパラパラと読めるように構成されていた.
- 作者: 向後千春
- 出版社/メーカー: 永岡書店
- 発売日: 2012/04/16
- メディア: 単行本
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「教える」とは身近な行動である
本書の第1章に「教える場面はいくらでもある!」という話があり,すごく同意できる内容だった.なんとなく「教える」という行動を難しく考えている人が多いように思うし,「教えることができるのは先生だけだ」と考えている人もいると思うけど,例えば仕事をメンバーに引き継ぐときも,ツールの便利な操作方法を紹介するときも,はたまた子供の素朴な質問に答えるときも,それらは全て「教える」ことで,誰しも無意識に教えている.また最近よく記事にも書いているけど,ブログを書いたり,イベントで登壇をしたりして,成果をアウトプットすることも本質的には「教える」ことだと思っている.「教える」という行動が,非常に身近であるということを認識しておくことが重要だと思う.
運動/認知/態度
本書の第3章では,教える内容は大きく3種類に分類できると書いてあった.
- 運動スキル
- 認知スキル
- 態度スキル
エンジニアリング的な観点でも,全てのスキルを教える機会がある.例えば,vim の操作を教えたり,IDE の操作を教えるのは「運動スキル」に該当すると思うし,プログラミングの文法を教えるのは「認知スキル」に該当すると思う.また,継続的に学ぶモチベーションを維持するのは「態度スキル」と言えるのではないかと思う.教えるスキルを分類するという考え方は今までなかったので,参考になった.
GROW モデル
第6章を読んでいたら,コーチング関連の情報を調べているとよく出てくる「GROW モデル」の話もあった.一言で言うと,目標達成を目指すための思考プロセスで,GROW の順番に考えることによって具体的な行動に繋がる.さらに,ゴール考えるときに「SMART の法則」と併用することが多いと思う.僕がブログメンターをしているときも,初回のキックオフでは GROW を意識して話を引き出すようにしている.
- Goal : ゴール
- Reallity : 現実
- Options : 選択肢
- What / When / Who / Will : 意志
教えたがり屋にならないように
第7章には「教えたがり屋にならないように」という注意喚起もあり,これは身が引き締まる思いだった.「丁寧に教えること」と紙一重だなとは思っていて(世話好きとお節介の関係に似ている),相手が本当に知りたいこと,もしくは知るべきことにフォーカスして教えるように意識したいと思う.さらに,相手が処理し切れないほどの情報量を投げ込むのではなく,適切な情報量に絞りたいとも思った.
まとめ
- 「教える」を知るための入門書として良かった
- 「教える」とは身近な行動である
- 運動/認知/態度と,3種類のスキルに分類して考える
- 「インストラクションデザイン(教育設計)」という分野に興味を持った
- 公開されているテキストを読む!
- 「上手な教え方の教科書」も気になる!
- 作者: 向後千春
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2015/08/05
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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次のステップとして,より理論的に「コーチング」という概念を学ぶ場合は「コーチングの基本」を読んでみるのが良いと思う.僕は去年に読んで「他責/自責/チャンクダウン」など,教えるときに重要なキーワードを知ることができた.