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「カンバン仕事術」には「始めるのをやめて,終わらせることを始める」ための実践的なアプローチが凝縮されていた

2016年に出版されて,読もう読もうと思いつつ積読になってしまっていた「カンバン仕事術」をやっと読んだ.

もう,とにかく良かった.カンバンに限らず,アジャイルな開発プロセスに興味がある人は全員読むと良いんじゃないかと思うほどオススメできる良書だった.僕が推進しているプロジェクトのメンバーに繰り返し,繰り返し説明している話(WIP,終わらせることを始める,振り返り,緊急など)も全て書かれていた.僕自身もっと早く読むべきだったし,メンバーにも読んでもらえば良かった ( ゚д゚)!!!

カンバン仕事術

カンバン仕事術

  • 作者: Marcus Hammarberg,Joakim Sundén,原田騎郎,安井力,吉羽龍太郎,角征典,?木正弘
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2016/03/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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WIP 制限

仕掛りタスク (WIP) を減らすことによって,各タスクのリードタイムが減るという理論を知っている人は多いと思うけど,実際に実践できている人は少ないのではないかと思う.僕の経験的にも,WIP の定義が甘いなーと感じる場面が多くあった.例えば「実装する予定がないのに仕様を整理しているタスク」は WIP だし,「コードレビューまで終わってるのにリリースされずに残っているプルリク」も WIP だし,「すぐには影響が無さそうだけど気になるエラーログを調査するタスク」も WIP と言える.本当に優先順位が高いのであれば,すぐに着手するべきだけど,その場合は今まで着手していたタスクを完全に止めるか,完全に終わらせるか,どちらかに振り切る必要がある.基本的には完全に終わらせるべきで,本書では「始めるのをやめて,終わらせることを始めよう!」と書かれていた.本当に最高のスローガンだと思う.朝会の冒頭で,全員で「始めるのをやめて,終わらせることを始めよう!」と発声練習をするのも良さそう(笑)

そんな「WIP」に関して,ここまで詳細に多くのページが割かれている本を今まで読んだことが無かった.第一部はストーリー形式で書かれていて,第二部では理論的に書かれている点も良かった.また「タスクが同じ列から何日も動かないこと」を「付箋紙が臭っている」と表現しているコラムがあり,このあたりの感覚をメンバー全員に知ってもらうことが,プロセスマネジメント(スクラムマスターなど)の最重要項目の一つだと思う.よくある話で「プルリクを出したらすぐに次のタスクに着手してしまうのはなぜか?」というものがあり,結局のところ,リリースされるまで WIP なのだから,レビューで止まってるタスクがあれば流す必要があるし,リリースで止まってるタスクがあれば流す必要がある.常に「付箋紙が臭っていないか?」をチーム全体で把握することがプロセス改善の第一歩だと思う.

スウォーミング

「スウォーミング」の解説が入っているのも本書の素晴らしい点だと思う.スウォーミングとは,特定のタスクが止まっていて WIP 制限が詰まっているときに,チーム全体でそのタスクに取り組むことと表現できる.制約条件の理論 (TOC) と同じ考え方で,ボトルネックが目の前にあるのであれば,全員で取り除こうという思考と言える.スウォーミングが重要視されてなくて,特定のタスクを抱えている特定のメンバーだけが苦しんでいるチームは案外多いのでは?

スウォーミング,もしくはカンバンを知るのに1番良いのは以下の資料 (One day in Kanban land) だと思う.シンプルなコマ漫画なので,英語でも読めると思うけど,調べたら日本語版もあった.プロジェクトのメンバーには何度も繰り返し紹介しているほどに,大好きな資料.

One day in Kanban land のポイントは大きく以下と言える.

  • 8コマ目 : タスク A の問題にエンジニア2名が加わって,スタックトレースの調査を手伝う(= スウォーミング)
  • 10コマ目 : タスク A の問題にさらにエンジニア2名が加わって,再発防止策となるテストコードの実装を手伝う(= スウォーミング)
  • 11コマ目 : タスク A の問題にプロダクトオーナーが加わって,他の差し込みタスクが来ないように防波堤の役割を担う(= スウォーミング)

まさに「スウォーミング」の具体例と言えると思う.最高!

緊急とは

とは言っても,本番障害など緊急タスクが差し込まれることはあるので,それ自体を否定するわけではない.そうではなく,適切に緊急タスク(サービスクラスの一つ)を扱うことが重要で,その具体的な方法が解説されている点も素晴らしかった.サービスクラスという表現は今までに聞いたことが無かったけど,一般的なのだろうか?どのクラスも,実際のタスクにマッピングすることができ,議論をする材料としても面白いと思う.

  • 緊急(特急)クラス
  • 確定納期クラス
  • 通常クラス
  • 欠陥クラス
  • 無形クラス

ゲーム

13章にはカンバン(などのプロセス)を学ぶことができるゲームが紹介されていて,どれも経験したことがなく新鮮だった.スクラムマスターの研修でも似たようなゲームをしたことを思い出したりした.

  • コイン渡し
  • ナンバーマルチタスクゲーム
  • ドットゲーム
  • ボトルネックゲーム
  • getKanban
  • カンバンピザゲーム

最近だと Not My Fault! が流行ったりもしているし,チームビルディングでゲームを実施しながら学ぶというスタイルは非常に効果的だと思う.たまには勉強会じゃなくて,ゲームをしてみるのも良さそう.

Not My Fault! ~俺のせいじゃない!~

Not My Fault! ~俺のせいじゃない!~

まとめ

本当に良書だった.読みながらたくさん書き込んでしまったし,机に置いておいて定期的に読み直すことになりそう.12章に「タイムボックスは役に立つ」という解説があるのも非常に興味深かった.ようするに,スクラムだとスプリントというタイムボックスがあり,スプリントプランニングとか,レトロスペクティブとか決まったイベントがあるけど,カンバンにはそういう区切りがなくて苦手という印象を持っている人に対するメッセージだと読み取れた.結局のところは,必要に応じてレトロスペクティブをすれば良いし,レビューの場を設ければ良いし,それぞれのイベントに「強制力を持たせない」という点がカンバンの特徴と書かれていた.すごーく勉強になった.

アジャイルな開発プロセスに興味がある人,タスクのリードタイムが長いことに課題を感じている人,新任リーダーを任された人など,様々な人に読んでもらいたい!絶対に学びがあるはず!

カンバン仕事術

カンバン仕事術

  • 作者: Marcus Hammarberg,Joakim Sundén,原田騎郎,安井力,吉羽龍太郎,角征典,?木正弘
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2016/03/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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