IBM技術者認定資格「IBM Tivoli Storage Manager V6.2 Fundamentals(000-532)」に合格したので情報をまとめておこうと思う.IBM技術者認定資格は他のメジャーな資格と比べて圧倒的に受験者が少なく,情報がほとんど公開されていないが,Tivoli製品のIBM技術者認定資格となると,特に情報が少ないように思う.Googleで検索しても取得者のまとめ記事などは残念ながら見つからなかった.そういう意味で,今回しっかりとまとめておくので,もし受験を考えている人がいれば参考にしてもらいたいなと.
試験結果
得点:77%(ボーダー:58%)
- IBM Tivoli Storage Manager ファミリー (正解率:100%)
- IBM Tivoli Storage Manager サーバー・アーキテクチャーの概念 (正解率:79%)
- IBM Tivoli Storage Manager ストレージおよび装置の概念 (正解率:71%)
- IBM Tivoli Storage Manager クライアントの概念 (正解率:71%)
- IBM Tivoli Storage Manager クライアントの実装 (正解率:76%)
受験した感覚的に8割程度は取れていると思っていたので,ほぼ予想通りの得点だった.出題される問題は,わかる人はすぐわかるけど,わからない人は勘で選ぶしかないみたいな問題が多かったので,わかる問題を足していくと大体8割程度かなーという感じだった.
試験概要
Tivoli Storage Manager(TSM)はIBMのTivoliブランドのストレージ管理製品で,このTSMの基礎概念を問う資格が今回の「IBM Tivoli Storage Manager V6.2 Fundamentals」である.出題される内容としては出題項目が公開されているのだが,日本向けのウェブサイト(IBM - 日本IBMについて)に掲載されている出題項目は中項目レベルまでしか掲載されておらず,ほとんど使い物にならないので注意が必要.なので,海外向けのウェブサイト(http://www-03.ibm.com/certify/tests/obj532.shtml)で詳細な出題項目を確認する必要がある.とりあえずこのObjectivesを印刷して流し読みしてみるところから始めてみれば良いんじゃないかと思う.
また今回の資格はTSM V6.2がターゲットになっているが,現実的にはTSMという製品の基礎概念を理解した上で,V6.2で追加されたデータ重複排除機能の概要を理解しておけば十分なので,あまりバージョンは意識しないでいいと思う.ようするにプロジェクトでTSM V5.5を使っている人がV6.2を受けても問題はなさそう.
参考資料(InformationCenter)
TSMのマニュアルと言えばInformationCenter(オンラインマニュアル).実際にプロジェクトでTSMの仕様やコマンドのオプションを確認するときにもマニュアルにアクセスするし,参考になる情報源だと思われる.ただV6.2向けのマニュアルは現時点では公開されていないようなので,最も近いバージョンだとV6.1になるのだが,個人的にはV6.1は翻訳の進捗が中途半端だったりしたので,V5.5のマニュアルを中心に読んでいた.あとマニュアルを1から読み進めて行くというのはかなり非効率だと思うので,自分で調べたいポイントや出題項目に載っているキーワードを検索して読むというスタンスで十分だと思う.また同等の内容をPDF形式でダウンロードできるので,自分はiPhoneに入れて持ち歩いたり,Dropboxに置いていろんなデバイスからすぐアクセスできるようにして,気になったときにすぐ読んでいた(iPadならまだしもiPhoneでInformationCenterを見るのはちと厳しい).
IBM Tivoli Storage Manager バージョン 6.1 資料
IBM Tivoli Storage Manager バージョン 5.5 資料
IBM Tivoli Storage Manager バージョン 5.3 資料
参考資料(Redbook)
次に天下のRedbook様を紹介する.他のメジャーな資格のように翔泳社のカラフル本が出版されているわけではないので,IBM技術者認定資格の一部を除き,その資格対策だけにフォーカスを置いたテキストがない.そこで,TSMの基礎概念を解説した「IBM Tivoli Storage Management Concepts | IBM Redbooks」がかなり参考になる.ページ数が多く,全部読むとなるとかなりのボリュームになるし,そもそも英語が苦手な人にとっては抵抗があるかもしれないが,TSMの基礎概念という観点だとほぼ網羅的に解説された一冊だと思う.気になったページからで良いので,是非少しずつ読んでみてもらいたい.
またTSM V6.1の新機能に関しては「http://publib-b.boulder.ibm.com/abstracts/sg247718.html」が参考になる.例えばデータ重複排除機能に関しては「Chapter 7. Data deduplication in Tivoli Storage Manager V6.1」にまとまっている.
参考資料(Tivoli Technical Domain)
Tivoli Technical DomainではTivoli製品の説明資料などが公開されていて,基本的にどれもエンドユーザ向けにわかりやすくまとめられた資料になっているのでかなり貴重な情報源と断言できる.特にデータ重複排除機能に関しては,TSM6新機能説明資料を見てもらえれば大体理解できてしまうのではないかと思う(詳細はマニュアル・Redbook参照).
クラウド・コンピューティング - 共有コンピューター処理を使用してプロビジョニングを迅速化 | IBM
クラウド・コンピューティング - 共有コンピューター処理を使用してプロビジョニングを迅速化 | IBM
クラウド・コンピューティング - 共有コンピューター処理を使用してプロビジョニングを迅速化 | IBM
クラウド・コンピューティング - 共有コンピューター処理を使用してプロビジョニングを迅速化 | IBM
クラウド・コンピューティング - 共有コンピューター処理を使用してプロビジョニングを迅速化 | IBM
参考資料(類似問題)
いざ勉強をしていても実際にどんな問題が出題されるのかわからないと試験の実感が沸かないという人は多いと思うが,残念ながら黒本などの問題集は出版されていないので,その他の情報源から類似問題を探す必要がある.今回自分で数点見つけることができたので,連携しておく.
- IBM Tivoli Storage Manager V6.2 Fundamentals - Exam #532 Sample Test(日本語版)
- IBM Tivoli Storage Manager V6.2 Fundamentals - Exam #532 Sample Test(英語版)
まずはIBMから公式に公開されているサンプル問題.同じ問題や類似問題が出題される可能性があるので,完全に理解しておく必要がある.日本語版と英語版に差はないので,どちらでも好きな方で.
これもIBMから公式に公開されているサンプル問題になるが,「IBM Tivoli Storage Manager V6.1 Implementation(000-025)」というTSMの実装面を重視した別の資格のサンプル問題.ただ今回の資格にもTSMクライアントの実装に関する問題が出題されるので解いておいて損はない.こうやって関連する他の情報まで視野を広げて調べるのは以外にも大変.
あと資格対策問題を販売しているTESTPASSPORTで提供されているサンプル問題だが,これがまた結構重要なポイントが載っていて,実際に類似問題が数問出題されたような気がする.もし資格の取得を最優先にするのであれば,TESTPASSPORTで対策問題を購入するという選択肢もあるかもしれない(個人的にはないけども).
参考資料(研修)
IBM研修で「Tivoli Storage Managerの基礎 - CD-ROMコース」が販売されていて,このコースに同梱されているテキストがTSMの基礎概念を網羅的にカバーしているので結構参考になった.ただそこそこ高価なものなので,そこまでするべきなのかどうかは別途検討の余地があると思う.
実際に受験してみて
まずコピーグループに定義するバージョン管理パラメータ(VEREXISTS,VERDELETE,RETEXTRA,RETONLY)に関しては,出題項目を見るとSection.2(D)に記載されているが,今回は出題されなかった.個人的にプロジェクトでTSMの設計・保守を担当していて得意分野だったので残念.
次にSection.5に記載されているTSMクライアントのGUI版に関してだが,CUI版でしか使ったことがない自分にとっては,GUI版でどのメニューを選択するべきですか?なんて聞かれてもさっぱりわからなかった.ここはもう消去法と勘で答えた.
データ重複排除機能に関しても出題されるとなっているが,実際には1,2問しか出題されなかった.一応V6.2の認定資格にはなるが,合格だけを考えるのであれば,データ重複排除機能の知識がなくても,他で十分リカバーできるような出題構成になっていると感じた.
Section.2(C)に各種バックアップ手法(Full/Incremental/Selective/Image or Logical volume backup/Adaptive subfile backup/Journal-based backup)に関する記載があるが,それぞれのバックアップ手法がどんな特徴を持っていて,どんな要件や環境の制約のときに有効になる手法なのかを理解しておく必要がある.また各コマンドに付与するオプションレベルの設問も出る可能性があるので,マニュアルの「第 9 章 処理オプションの使用」に掲載されているオプションを代表的なものから見ておくことをおすすめします.
Section.5(H)に記載されているTSMの各種ログファイルに関しても,どのログファイルに何が吐かれるかという点まで理解しておく必要がある.
最後に
TSMの導入経験や運用経験が十分にある人にとっては特に追加の対策をしなくても合格できると思うが,これからTSMの知識を深めていこうという人にとっては,出題範囲が広く,網羅的にTSMの基礎概念を理解しておく必要があるのでそこそこ難しいかもしれない.ただ逆に言えば,合格するためにはTSMを体系的に学ぶ必要があるので,スキルとしては得られるものが多いと感じた.あと個人的には合格ボーダーが58%というのは低すぎるんじゃないかと思う.そんなこんなで,今後TSM関連のIBM技術者認定資格を受験する人の参考になれば嬉しいです.