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オンライン研修に悩むあなたへ /「オンライン研修ハンドブック」を読んだ

インストラクターとしてオンライン研修を担当しているなら必読とも言える「オンライン研修ハンドブック」を読んだ感想をまとめる.実は "2021年7月頃" に購入して1度読んでいたけど,書評記事はまだ書いていなかった.今さらながら実体験(インストラクター経験4年半以上/オンラインは2年半ほど)と比較しながらポイントをまとめておこうと思う❗️

本書は本当に素晴らしくて,インストラクターの悩みを解決し,インストラクターとしての習熟度を数段階引き上げてくれる.1度読んだら,今度はインストラクター仲間と意見交換をしながら読み進めるとより効果的だと思う.また本書に依存しすぎる必要はなく,実際のインストラクションの場で最適な解を見つけるべきで,その選択肢を学べる一冊とも言える.

今回の記事を書くにあたって,表記揺れにならないように以降は「本書の用語(以下参照)」にあわせることにする💡

  • オンライン研修(他には "オンライントレーニング" や "オンライン講義" と言ったりもする)
  • 講師(他には "インストラクター" や "先生" と言ったりもする)
  • 参加者(他には "受講者" や "お客様" と言ったりもする)

オンライン研修ハンドブック

オンライン研修ハンドブック

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目次

目次を見るだけで講師なら必読感が伝わると思う💡

  • 第1章 : 学習効果を高めるオンライン研修とは
    • 1-1 オンライン研修に関するよくある誤解
    • 1-2 応急措置
    • 1-3 効果的なオンライン研修の基本
  • 第2章 : 参加者主体のオンライン研修の基本原則
    • 2-1 大切なのは講師ではなく参加者
    • 2-2 伝えたからと言って、相手が学んだとは限らない
    • 2-3 研修の目的は「結果」を出すこと
    • 2-4 プロセスとして「研修」を設計する
    • 2-5 インストラクショナルデザインの重要性
  • 第3章 : 参加者主体のオンライン研修をデザインする
    • 3-1 学習の法則
    • 3-2 時間配分 ー「90/20/4」の法則
    • 3-3 研修の構成 ー CSR:コンテンツ・参画・リビジット
    • 3-4 研修の構成順序 ー EAT:経験・気づき・理論
    • 3-5 参加者が主体的で安心して学べる学習環境をつくる
    • 3-6 学習スタイル
    • 3-7 記憶のメカニズム
    • 3-8 アクティビティをデザインする ー CORE:クロージング・オープニング・リビジット・エナジャイザー
    • 3-9 研修デザインのステップと作成例
  • 第4章 : 参加者主体のオンライン研修のファシリテーション
    • 4-1 なぜファシリテーションが必要なのか
    • 4-2 オンライン研修でのファシリテーションの特徴
    • 4-3 適切な人数を設定する
    • 4-4 アクティビティの効果的な進め方
    • 4-5 アクティビティのインストラクション
    • 4-6 問いかけ・質疑応答
    • 4-7 プロデューサーの役割
  • 第5章 : 困った場面とその対処法
    • 5-1 困った場面とその対処法

正誤表サイトはなさそうだったけど,読みながら気付いた誤植も列挙しておく.

  • 目次
    • 参加者いる参加者がいる
  • 第1章
    • 内臓内蔵
    • できないでしょ。できないでしょう。

第1章

"第1章" では,オンライン研修とは何なのか?どんな誤解があるのか?参加者主体とはどういう意味なのか?など,基本的だけど重要な基礎知識がまとまっている.オンライン研修が一方通行になってしまったり,参加者のリアクションがなかったり,沈黙が恐くなってしまったりするときにどうするべきかなども載っている.

そして「講師に求められる3つのスキル」もしっかりとまとまっている.講師をしていると当たり前ではあるけど,これから講師を目指そうという人には参考になるはず.

  • 研修デザイン(インストラクションデザイン)
  • デリバリー
  • ファシリテーション

逆に僕は同意できなかったプラクティスもあった.例えば「誤解② : オンライン研修で講師の存在をアピールする必要はあるのか」に関しては,参加者が主役であることは同意だけど,講師自身も研修コンテンツに含まれると思っているため「講師が誰だったのか思い出せない」なんて言われたら残念に感じてしまう.僕は講師という仕事は「美容師に似ている」とよく表現している.美容師さんの腕を信頼して指名することがあるのと同じように,講師自身も学びの立役者であるべきだと思う.

また「講師の自己紹介は後回しにする」というプラクティスも同意できなかった.僕が参加者だったら「この講師はどんな経験を持った人なんだろう!信頼できるのだろうか!」という見極めを最初にしたいと思う.きっとこれは1個前の話と繋がっていて「講師の役割」という観点で本書と僕の感覚が違うんだと思う.こういった「違い」を味わいながら読み進められるのも本書の素晴らしいところだと思う.

他にも "ブレンディッドラーニング" や "同期と非同期の融合" や "ソフトオープニング" などのプラクティスも紹介されている.他の書籍にも関連していて,このあたりは併読しておくと良さそう.

第2章

"第2章" では,参加者主体にするためのプラクティスやアンチパターンが紹介されている.特に「講師都合」という表現があって,非常に刺さった.例えば,以下は必ずしも必要ではないのに講師都合(講師がやりやすいから...など)で参加者に求めてしまっているアンチパターンとして挙げられていた.今後「それって講師都合だよね?」っていうパワーワードを使っていきたい❗️笑

  • カメラを常にオンにしてもらう(本当に必要なの?逆に集中を妨げてしまうのでは?)
  • 研修開始時に全員に自己紹介をしてもらう(本当に必要なの?プレッシャーに感じてしまうのでは?)
  • 発言の順序を指定する(本当に必要なの?なぜそんなことまで指示されないといけないの?)

さらに研修効果の測定として「カークパトリックの4段階評価法」なども詳しくまとまっている.理解していても,特に Level.3 と Level.4 は測りにくかったりすると思う.それでもオンライン研修を「ただやって終わり」にしないという気持ちは常に持っておくべきだと思っていて,普段から強く意識している❗️

  • Level.1「反応 : 研修に対する満足度を測る」
  • Level.2「習得 : 研修で学んだことの習得度を測る」
  • Level.3「行動 : 研修で学んだことの職場での実践度を測る」
  • Level.4「成果 : 研修がビジネスにもたらした成果を測る」

他には「オンライン研修は対面研修よりも事前の研修デザインが求められる」と書かれていて「それな!!!」という気持ちだった.だからこそ,一方通行に予定通り進んでいるオンライン研修を見ていると,あまりデザインが練られていないなーと感じる.

第3章

"第3章" では,どのように研修デザインをするのかがまとまっている.例えば,以下の「学習の法則」は参考になる."くわっ" というのは「学んだことを教えられるレベルになってはじめて本当に習得したと言える」という話のこと.

  • 法則 1 : 学習者は大きな身体をした赤ちゃんである
  • 法則 2 : 人は自分が口にしたことは受け入れやすい
  • 法則 3 : 習得はいかに楽しく学ぶかに比例している
  • 法則 4 : 行動が変わるまで学習したとは言えない
  • 法則 5 : くわっ、くわっ、くわっ

他にも「90/20/4 の法則」「リビジット (revisit)」などのプラクティスも紹介されている.特にオンライン研修中にインプットが多すぎると情報が溢れて吸収できなくなってしまうため,リビジットで参加者自身が理解を整理する時間を取ったりする.本章の後半にはリビジットのポイントなども詳しくまとまっている.

第4章

"第4章" では,ファシリテーションに関するプラクティスがまとまっている.特に「参加者を巻き込む」という観点で3種類の図解があってわかりやすかった.以下には個人的に少し形を変えた図を作ったので載せておく.オンライン研修では「2. 講師と1人の参加者の対話のみ」をよく見る.一見すると巻き込めているように思うけど,さらにそこから「3. 参加者同士の対話」まで昇華できると最高だと思う❗️

ファシリテーションに関しては前に書いた以下の記事も参考になると思う.

kakakakakku.hatenablog.com

さらに「安心できる場を作る」「匿名性のあるツールを使う」「クローズドクエスチョンを活用する」などのプラクティスも載っている.2022年11月に出演したポッドキャスト fukabori.fm (第84回) で話した話にも関連していると思う.あわせて聴いてもらえればと❗️

fukabori.fm

第5章

"第5章" では,よくある課題に対する対処がまとまっている.何かしら困っている課題があるのではないだろうか❗️

  • 研修デザインについて
    • [1]どうしても一方的に話してしまう
    • [2] 反応がないと話しにくい
    • [3] 配付資料は手元にあったほうが良いと思うが、印刷したものを送ることができない
    • [4] アクティビティのネタが思いつかない
    • [5] 「一部の参加者はオンライン、ほかの参加者は対面で……」というリクエストを受けた
  • テクニカル面(講師側)
    • [6] 手探りでやってはいるものの、オンラインプラットフォームを使いこなせる自信がない
    • [7] 使ったことのないプラットフォームでの実施を依頼された
    • [8] インターネットの接続や機器類など、予期せぬトラブルに対応できるか不安がある
    • [9] 自分のカメラ映りが気になる
    • [10] 講師はリモートで、参加者は集合している
  • テクニカル面(参加者側)
    • [11] 参加者の環境が心配
    • [12] 参加者の属性的に用意しているツールが使えるかどうか不安
    • [13] スマートフォンやタブレットからの参加者がいる
  • 参加者への対応
    • [14] 参加者の様子が見えず、伝わっているかわからない
    • [15] 参加者との関係構築がしにくい
    • [16] ディスカッションが活発ではない、対話が進まない
    • [17] 想定外のコメントや挑戦的な質問がくる
    • [18] 寝ている、明らかに研修に集中していない参加者がいる
    • [19] 発言するけれどポイントがずれている
    • [20] 同じ人ばかり発言する
    • [21] 講師を質問攻めにする

まとめ

「オンライン研修ハンドブック」を読んだ感想をまとめた.

本書は本当に素晴らしくて,講師(インストラクター)のバイブル的な一冊❗️おすすめでーす✌

オンライン研修ハンドブック

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