「完璧を求める心理」を読んだ.良かった〜本当に良かった❗️もっと早く本書に出会いたかったほどに.
本書は "自分は完璧主義だと思うな〜" という人にはもちろんおすすめだけど,自分自身は違うけど同僚に完璧主義な人がいたり,会社でマネージャー職やリーダーポジションを担当しているなら,きっとメンバーの中に完璧主義な人がいることもあるだろうし,多くの人におすすめできる一冊だった.また完璧主義と子育てに関する話も載っているため,育児をしている人も興味深く読めると思う.
読むことにした背景 🦁
僕自身は本書を読む前から完璧主義の傾向があると思っていた.また今まで働いたどの会社でも同僚から「完璧主義だよね〜」と繰り返し言われてきた背景がある(良い意味でも悪い意味でも).そして,本書を読んでみて「やはり完璧主義だ」と再認識できた.
「完璧主義」という言葉を聞くと "ポジティブ" に感じる人もいれば "ネガティブ" に感じる人もいると思う.僕自身は「完璧主義だから完遂できたな〜」と思う成功体験もあるし「完璧主義だからたくさん問題が起きてしまったな〜」と思う失敗体験もある.そんな自分の「完璧主義」という性格と今後もっとうまく付き合っていきたいと思って,本書を読むことにした.
刺さったところ・参考になったところ・また読み直したいところなど,読書メモやマーカーを付けていたらあまりに多くなってしまった❗️今回は特に印象に残ったところと読書メモの抜粋をまとめて本書を紹介したいと思う.また本書では研究結果や論文などの紹介も多くて視野を広げられたので,実際に論文も読んでみようと思っている.僕も研究の被験者に使ってもらいたいなー👌
目次 🦁
本書は "理論編" と "実践編" で構成されていて,どちらも参考になった.また最後の "文献" も僕にとっては宝のように思えて,もっともっと学びたくなった.
- 第Ⅰ部 : 理論編
- 第1章 : 完璧主義とは何か
- 第2章 : 完璧主義になりやすい人・なりにくい人
- 第3章 : 完璧主義と心とからだの健康
- 第Ⅱ部 : 実践編
- 第4章 : 完璧主義傾向を測ってみる
- 第5章 : 完璧主義の自分とうまくつきあう方法
- 第6章 : 完璧主義の他者とうまくつきあう方法
- 文献
そもそも完璧主義とは何か? 🦁
完璧主義(もしくは完全主義)は英語では Perfectionism と言う.著者は完璧主義を以下のように定義していた.僕自身は 過度に完璧を求めている
という認識はなくて「このぐらいじゃないとできたとは言えないでしょ〜」という感覚なんだけど,他人からは 過度に
と思われていることもあるし,うまく定義されているなぁーと思った.
過度に完璧を求めるパーソナリティあるいは認知傾向
また,第4章には他の研究者の定義も紹介されていた.特に "バーンズ" の定義には 完璧主義な人を突き動かしているのは "自分自身を超える" という欲求である
とも書いてあって,まさに僕じゃん...という気持ちになった.
(ホレンダーの定義)その状況が要求しているよりも質の高いパフォーマンスを自分自身や他者に常に要求する傾向
(バーンズの定義)達成が不可能に思えるゴールに対して強迫的にいつも達成しようとこだわり自分の価値を結果や達成度のみで測ろうとしている人
完璧主義は3種類ある 🦁
本書では完璧主義を以下の3種類に分類して解説されていた.この分類がとても印象に残っている❗️
- 自己志向的完璧主義(自分に完璧を求める)
- 他者志向的完璧主義(自分から他者に完璧を求める)
- 社会規定的完璧主義(自分が他者から完璧を求められていると認知する)
どれか1つに該当することもあれば,全部に該当することもある.また「他者志向的 → 社会規定的 → 自己志向的」の流れで進むこともあると書いてあった.実際に3種類の完璧主義には「正の相関関係」があるとも書いてあった.読みながら「僕自身は間違いなく全部だなぁ...」と感じた.
完璧志向とは何か? 🦁
本書で重要な用語として「完璧志向」がある.完璧志向は ある限定されたことを対象にして完璧を求める
というマインドセットのことで,"完璧じゃなきゃいけない" という信念にこだわらない点が異なる.本書では完璧主義ではなく完璧志向を目指すべき❗️と繰り返し書かれている.
表1-1 に載っている 完璧の構成要素の違い
も興味深かった💡
- 完璧主義
- 高すぎる目標の設定
- 厳しすぎる自己評価と自己批判
- 失敗恐怖
- 強すぎる評価懸念
- 完璧志向
- 理にかなった高い目標の設定
- しっかりした自己評価と自己強化(褒める・励ます)
- 失敗を恐れないこと(挑戦的姿勢)
- 他者の否定的な評価をあまり気にしないこと
完璧主義を計測する 🦁
第4章には完璧主義を "計測する" 尺度が載っている.論文で提唱されている尺度は権利面で書籍に載せられないらしく,少し改変されたものが本書に載っていて,実際に定量的な数値を調べることができる.実際に僕もやってみた❗️
自己志向的/他者志向的/社会規定的完璧主義を測定する尺度(成人用)📊
42点満点
で以下の結果だった.定量的に全部に当てはまっていた.
- ① 自己志向的完璧主義 : 39点
- ② 他者志向的完璧主義 : 34点
- ③ 社会規定的完璧主義 : 34点
自己志向的完璧主義を4つの観点から測定する尺度(成人用)📊
24点満点
で以下の結果だった.例えば どんなことでも完璧にやり遂げることが私のモットーである
や 中途半端な出来栄えでは我慢できない
という設問があって「そりゃそうに決まってるだろ!!!!!」という気持ちで回答していた.
- ① 完璧でありたいという欲求 : 24点
- ② 自分に高い目標を課す傾向 : 22点
- ③ ミス(失敗)を過度に気にする傾向 : 22点
- ④ 自分の行動の出来栄えに漠然とした疑いを持つ傾向 : 22点
他にも「子供用の尺度」や「養育者による子育ての尺度」もあって,興味があったら計測をしてみると良さそう📊
不適応 🦁
適当的な完璧主義もあるけど,それは完璧志向に近く,一般的には完璧主義は不適応(軽度も重度もある)になりやすいと書いてあった.不適応な振る舞いや症状として以下などが載っていて,思い当たる節しかなく刺さった🔪
特に「取り掛かるのが遅れる」と「先延ばしにしがち」というのはこれまで幾度となくあって(常に WIP 制限をしてるという理由もあるにはあるけど),やる気はあっても「中途半端になってしまうのは嫌だから完璧にできるまで待とう」という心理が働いてしまう.まさに僕じゃん!という解説がここにもたくさんあった.
- 軽度
- 課題や仕事への取り掛かりが遅れる
- 先延ばしをして自己嫌悪や無気力になる
- 他者を頼れない
- 新しいことにチャレンジしなくなる
- 過剰適応になりやすい
- 重度
- 燃え尽き症候群
- アルコール依存
- 薬物依存
- うつ病
読書メモ 🦁
第一部 : 理論編
- 英語だと
Perfectionism
(完璧主義/完全主義) - 完璧主義は不適応に陥りやすい
- 逆に高いパフォーマンスが出ることもある(著名な芸術家や学者やスポーツ選手など)
適応的な
完璧主義(健康な
完璧主義)不適応な
完璧主義(不健康な
完璧主義)- 完璧主義とは何か?
- 完璧主義の種類
- 自己志向的
- 他者志向的
- 社会規定的
- 完璧主義だと周りの人から嫌われる可能性が高い
- 完璧主義から
完璧志向
に移行するべき 完璧に近付くことを良しとする
を受け入れる- 医師・看護師・職人は完璧が求められる仕事
- 特に医師・看護師はミスができないという
失敗恐怖
が強い
- 特に医師・看護師はミスができないという
- 人間が持つ心理的欲求の中に
有能さへの欲求(コンピテンス欲求)
がある- この中に
承認欲求
も入っている
- この中に
- 完璧主義になる背景の一つは乳幼児期に形成される不安定なアタッチメントが関係している
- ① 子供への干渉的な養育行動
- ② 子供の生活に完璧を求める養育行動
- ③ 育児書などに基づく完璧な養育行動
- 父親の完璧主義は子供の完璧主義の形成には影響を及ぼさない(2001年の研究)
- これは
父親が養育にそこまで関わらない前提
だから今は違うかも
- これは
- パーソナリティにおける5つの特性 (OCEAN)
- 開放性・知性 (Openness to Experience)
- 誠実性・勤勉性 (Conscientiousness)
- 外向性 (Extraversion)
- 調和性・協調性 (Agreeableness)
- 情緒不安定性・神経症傾向 (Neuroticism)
- 完璧主義と関連するのは
C
とN
- 完璧主義は中途半端を嫌う
- 完璧主義は遺伝する(あくまで推定としては 40%の遺伝率)
- 誠実で神経質な人ほど社会規定的完璧主義に陥りやすい
- 完璧主義は心身へのポジティブな影響は望めない
- 完璧志向は周囲からの信頼が高くなり安心して物事を任せられる存在と認知される
- 高目標設定(自分に高い目標を課する傾向のこと)
- 軽度の不適応
- 重度の不適応
- 他者志向的だと完璧を求められた他者が社会規定的になってネガティブな影響を受けることもある
第二部 : 実践編
- ホレンダーの完璧主義の定義
- バーンズの完璧主義の定義
- 完璧主義を計測する
- 自己志向的完璧主義だと対人関係があまり良好ではない
- 他者を信頼できない
- 対人関係を築くのが苦手
- 自分をサポートしてくれる人をなかなか作れない
- 自己志向的完璧主義とうまく付き合う
- ① 全てのことに完璧を求めている
- ② いつも完璧でなければならない
- ③ いつも高すぎる目標を設定している
- ④ 自己評価が厳しすぎる
- ⑤ 失敗するのではないかといつも恐れている
- ⑥ 他者の評価がすごく気になる
- 完璧主義による "メリット" と "デメリット" を書き出して比較する
- プラットフォール効果
「プラットフォール効果」というものを今日知った💡
— カック (@kakakakakku) 2023年3月10日
有能な人とかスゴイ人が弱みを見せたりちょっと失敗したりすると逆にその人に対する好感度が上がるっていう心理学でよく知られた効果らしい❗️へぇへぇ
まとめ 🦁
「完璧主義」とは何か?という今まで曖昧に理解していたところの解像度を上げることができる一冊だった❗️完璧主義だと言われる僕にとってはもっと早く出会いたかったと思えるほどに貴重な一冊だった.本書で学んだことを意識しつつ,今後は「完璧志向」を目指して強みを活かしていきたいと思う💪