「コーチングの基本」を読んだ.今年は "教える" という行動をもっと深く知るという個人的なテーマがあって,2月からプログラミング学習者のパーソナルメンターという仕事もしている.また,社内でメンバーの育成を担当する機会もある.そういう背景から,まずは「コーチング」の本質を知りたいと考えていた.経験的に「こうするべきだよなー」と知っていた部分も多かったけど,それが専門的な用語で表現できることを知れたのが1番の収穫だった.用語で表現できるというのは本当に重要なことだと思う.
- 作者: コーチ・エィ,鈴木義幸
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 2009/08/29
- メディア: 単行本
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3原則
コーチングには「3原則」と呼ばれるマインドがある.
- 双方向
- 継続性
- 個別対応
個人的にどれも意識していたことではあったが,「双方向」のところで出てきた「オートクライン」という用語を知れて良かった.オートクラインとは「アウトプットすることによって,自分自身で気付くこと」と表現することができて,例えば,どうしても困ったときに誰かに相談したら,相談しながら自分で解決できてしまった,といったような経験がある人も多いのではないかと思う.それこそが「オートクライン」である.また,オートクラインを起こすためには,適切な質問とお互いの信頼関係が必要であると書かれていて,納得感があった.コーチ / メンターの仕事は答えを教えることではなく,自律的に答えに辿り着けるようにサポートすることなので,もっともっと質問力を磨きたいとも思った.
他責と自責
掲げた目標と現在のギャップを考えるときに,そのギャップが発生している原因を他人や環境のせいにしてしまうことを「他責」と言う.
- 上司が決めてくれないから
- どうせ言っても聞かないだろうから
- 私には他にもやる仕事があるから
本書では「他責」の例として,こんな発言が紹介されていた.誰しもよく言ってしまうし,そもそも「愚痴」と言うのは全て「他責」なのではないかと思う.そこで,この「他責」を「自責」に切り替えることで,全ての責任を自分に引き寄せてしまうことができ,目標達成に向けて具体的なアクションが立てられるようになる.本書にも書いてあるが,誰の問題なのかは本質的には重要ではなく,どんな状況でも「自責」に切り替えることで,前向きな行動ができるようになるということだった.僕もメンターとして「今の話を,自分を主語にして説明し直すことができますか?」と積極的に質問を問いかけようと心に決めた.
個人的にも2016年から「愚痴を言わない」というのを意識していて,言いたくなったら具体的なアクションを考えるようにしていた.僕のこの意識は,まさに「他責から自責に」だったんだなと感じた.「愚痴を言わない」という話は年末年始の記事にも書いてある.
聞く(傾聴)
聞くポイントとして,大きく5点紹介されていた.
- 「聞く」ことに集中する
- 相手の話の先読みや,結論の先取りをせず,最後まで聞く
- 相手のノンバーバル(非言語)な情報を受け取る
- 「聞いている」というサインを送る
- 沈黙を共有する
2番目に紹介されていた「話を最後まで聞く」というのが,個人的には苦手意識がある.話の先読みをすることが変に習慣化してしまっているため,ミーティングなどでも「あー,なるほど,言いたいことわかる」みたいに食い込み気味で話を進めてしまうことがある.これは本当に話の腰を折ることにもなるし,意識的に直さないといけないなと改めて感じた.
話を聞きながら常にリアクションをしたり,目線を合わせたり,そういうポイントは常に意識しているため問題ないと思うが,ここが苦手な人は非常に多いのではないかと思う.話していて「聞いてるの?」と聞きたくなる状況があれば,それは聞く姿勢が相手に伝わっていないということだと思う.
「聞く」に関しては前から似たような課題感があり,関連した本も読んだことがある.
チャンクダウンとスライドアウト
質問をするときに,詳細に掘り下げていくことを「チャンクダウン」と呼び,別の答えを引き出すことを「スライドアウト」と呼ぶ.課題を洗い出すようなときは,詳細までは考えず「スライドアウト」で質問し,具体的な目標を決めていくときなどは,「チャンクダウン」で質問する.それぞれに用語があるということを知れてよかった.
アクノレッジメント
アクノレッジメントは,承認する行動のことで「活躍しているのを知っていますよ」や「業務改善の効果が本当に大きいですね」のように変化を明確に伝えることを言う.これは過去に読んだジャイキリ解説本でも紹介されていて,コーチングに限らず,組織マネジメントにおいても,本当に重要なことだと思っているので,日々意識して使うようにしている.
まとめ
「コーチングの基本」はコーチングに限らず,組織マネジメントにも応用できる内容になっていて,良書だと感じた.引き続き,コーチング,メンタリング,組織マネジメントを深く学んでいく.
- 3原則
- オートクライン
- 他責と自責
- 話を最後まで聞く
- チャンクダウンとスライドアウト
関連
3月にゲスト出演させてもらった Podcast でも関連した話をしているので是非聞いてみてもらえればと!開発合宿に技術アドバイザーを呼んだ施策は「オートクライン」を目的にしていたし,どのように新卒と「相互メンタリング」を推進したのかという話もしている.