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どうすればうまく教えられるのか /「インストラクショナルデザイン」を読んだ

アウトプットとは「情報を伝えること」であり,視点によっては「教えること」と言い換えることもできる.1年半前の登壇資料(アウトプット駆動学習を習慣化する)にも書いた通り,僕はアウトプットの延長線として「教えること」に強く興味があり,プログラミング講師を約2年,ブログメンタリングを約1年半,技術講師を約8ヶ月と,直近数年間は「教えること」を追求するために多くの時間を割いている.どうすればうまく教えられるのか.どうすればうまく教えられないのか.そんなことばかり考えている.

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インストラクショナルデザイン

とは言え,まだまだ「教える技術」を磨くために,最近「インストラクショナルデザイン」を読んだ.本書を引用すると「インストラクション = 何らかの行動を引き起こすための仕掛け」と書いてあり,教育だけではなく,例えば道路標識や取扱説明書なども含まれる.よって「インストラクション」は,より幅広い意味で「教える」「伝える」ことを表現している言葉と言える.今回は「インストラクショナルデザイン」の書評をまとめる.

インストラクショナルデザイン―教師のためのルールブック

インストラクショナルデザイン―教師のためのルールブック

目次

本書は二部構成になっている.調べてもあまり目次が出てこなかったので,内容をザッと把握できるようにするためにも載せておく.

  • 前編 : インストラクションの鉄則
    • 鉄則 1 : 何を教えるのかをはっきりさせる
    • 鉄則 2 : 学びにコミットする
    • 鉄則 3 : 教える理由をはっきりさせる
    • 鉄則 4 : 成功の基準をはっきりさせる
    • 鉄則 5 : 標的行動を見せてやらせて確認させる
    • 鉄則 6 : 意味ある行動を引き出す
    • 鉄則 7 : 引き出した行動はすぐに強化する
    • 鉄則 8 : 正答を教える
    • 鉄則 9 : 誤答を教える
    • 鉄則 10 : スペックを明記する
    • 鉄則 11 : 学び手を知る
    • 鉄則 12 : 学び手は常に正しい
    • 鉄則 13 : 教え手を知る
    • 鉄則 14 : 学ばせて楽しませる
    • 鉄則 15 : 個人差に配慮する
    • 鉄則 16 : 「分かりました」で安心しない
    • 鉄則 17 : 改善に役立つ評価をする
  • 後編 : インストラクションのデザイン
    • ステップ 1 : 本当にインストラクションが必要ですか?
    • ステップ 2 : しない・できないの原因は? 問題の原因分析
    • ステップ 3 : 何を教えるか明らかにする 課題分析 (1)
    • ステップ 4 : 何を教えるか明らかにする 職務分析
    • ステップ 5 : 何を教えるか明らかにする 課題分析 (2)
    • ステップ 6 : 学び手のプロフィールを書く
    • ステップ 7 : どこからどこまで教えるのかを決める (1)
    • ステップ 8 : どこからどこまで教えるのかを決める (2)
    • ステップ 9 : どこからどこまで教えるのかを決める (3)
    • ステップ 10 : 教える内容を分析する RULEG Part 1
    • ステップ 11 : 説明のための材料を用意する RULEG Part 2
    • ステップ 12 : 練習のための教材を用意する RULEG Part 3
    • ステップ 13 : 改善に活かせる評価をする
    • ステップ 14 : 開発評価を行う
    • ステップ 15 : 性能評価を行う
    • ステップ 16 : 実地評価を行う

鉄則 12 : 学び手は常に正しい

「鉄則 12」は非常に考えさせられる内容だった.例えば,相手にうまく教えられないときに「相手のやる気がなかった」とか「教科書が悪い」など「個人攻撃の罠」に陥らないようにするべきという内容だった.言い換えると「他責を自責に」と表現することもできる.どんな状況でも「学び手は常に正しい」と考えることで,うまく教えるために自分自身の行動をどのように改善できるのかを考えようと思う.本書では「インストラクションを受ける側」のことを「学び手」と表現している.

鉄則 15 : 個人差に配慮する

学び手は誰しも知識と経験に差があるので,同じインストラクションを使っても,当然ながら理解度に差が出る可能性がある.特に10名以上など,クラスルーム型研修をする場合は,差が顕著になる.本書に書いてあり,重要だなと感じたことは「個人差に対処するため事前に対策を考えておく」という点で,理解はしていても,案外「個人差に対処する対策」を洗い出せていないことも多く,改めて考えてみたいと思う.

鉄則 16 : 「分かりました」で安心しない

「わかりましたか?」は確かによく言ってしまうけど,本書では「禁じ手のひとつ」と書かれていた.重要なのは「本当にわかったのかどうか」を確認する方法を事前に用意しておくことで,本書では,以下の4種類が確認基準として紹介されている.教えながら「言い換えられそう?」や「例外はありそう?」など,対話をしながら「本当にわかったのかどうか」を確認したいと思う.

  • その定義を言えるようになる
  • その定義を自分の言葉で言い換えられるようになる
  • その定義にあてはまる例と例外を区別できるようになる
  • その定義の例を自分で考えられるようになる

ステップ 2 : しない・できないの原因は? 問題の原因分析

インストラクションは,あくまで学び手の「知識や技能の未習得」がわからない原因になっている場合に必要かつ有効であり,それ以外の場合はインストラクションが有効な解決策にならない場合もあるという話だった.代表的なものは「動機づけ」で,その場合は「パフォーマンスマネジメント」が必要かつ有効であると書いてあった.本書では「インストラクションを与える側」のことを「教え手」と表現しているけど,教え手は適切に原因を判断し,場合によっては「パフォーマンスマネジメント」に時間を割く必要がある.詳しくは以下の本に載っている.

パフォーマンス・マネジメント―問題解決のための行動分析学

パフォーマンス・マネジメント―問題解決のための行動分析学

ステップ 15 : 性能評価を行う

インストラクションが,教えるべきことを教えられているかを確認することを「性能評価」と呼ぶ.例えば,インストラクションの後のテストで間違いが多くある場合,「個人攻撃の罠」に陥るのではなく,インストラクションに問題があることを疑う姿勢が重要になる.技術講師をしているときも,意図的に「2種類のインストラクション(説明資料)」を用意して,A/B テストのように比較をする場合がある.今まで実施していたことを「性能評価」と表現するんだなと気付くことができた.

まとめ

本書を読んだことにより,当然ながら新しく学べたこともあったし,日々の仕事(技術講師)をしながら既に意識できていることをうまく言語化してもらえた!と感じる部分もあった.技術講師など「情報を伝えること」を仕事にしている人はもちろんのこと,例えば「新人教育を任されたエンジニア」だったり,メンバーと 1 on 1 をする機会が多くありそうな「Engineering Manager」だったり,幅広くオススメできる.

なお,今月から「放送大学」に科目履修生として入学し,現在は「教育心理学概論」を履修している.今期はアカデミックな観点からも「教えること」を学んでいる.どうすればうまく教えられるのか.どうすればうまく教えられないのか.アウトプットの延長線として,僕は「教えること」を追求していくぞ!

インストラクショナルデザイン―教師のためのルールブック

インストラクショナルデザイン―教師のためのルールブック

TED Talk

少し文脈は変わるけど,教育改革などのテーマを学ぶなら以下に載せた Ken Robinson 氏の TED Talk を見ると良いと思う.内容もさることながらプレゼンテーション自体も非常に面白く勉強になる.

Sir Ken Robinson: Do schools kill creativity? | TED Talk

www.ted.com

Sir Ken Robinson: Bring on the learning revolution! | TED Talk

www.ted.com

関連本

「教育/教える/コーチング」に関連する本は今までも読んでいる.オススメ本として,以下に参考リンクとして載せておく!

kakakakakku.hatenablog.com

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関連記事

冒頭に載せた登壇資料は以下にある.

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